陽が白熱して黄色い水や小さな紫の花などのうえでゆらめき、 眼を開けていられないほど暑かった。 私は電撃をうけたように一つの啓示にうたれたのだが、 それが何であるのかわからないでいた。 ただ、もうこの国には二度と来ることがあるまいと ひたすらに思い詰めていた。 淋しかった。
開高健 「飽満の種子」