VIETNAM

陽が白熱して黄色い水や小さな紫の花などのうえでゆらめき、
眼を開けていられないほど暑かった。
私は電撃をうけたように一つの啓示にうたれたのだが、
それが何であるのかわからないでいた。
ただ、もうこの国には二度と来ることがあるまいと
ひたすらに思い詰めていた。 淋しかった。

開高健 「飽満の種子」