9.一番有名な日本の調味料・醤油の楽しみ方

 昔、私の父がゴルフの景品で、脂がのった高級な牛ステーキ肉をもらってきました。「良いお肉はやっぱり塩とこしょうだけで食べないと!」などとわかったような事を言いながら母に焼いてもらったのですが…。若い時だったら良かったのでしょうが、歳を重ねるにつれて肉の脂が胃に重く感じてしまい、半分しか食べられませんでした。だけど残った肉に醤油を少しかけたら不思議な事が起きました! 肉の脂っこさが抑えられ、代わりに脂の甘さが引き立ち、パクパクおいしく全部食べられたのです! 醤油なんて当たり前のようにいつも食卓にあって新鮮味もないから、何も高級な肉にまでかけなくてもいいじゃないか…と思ったのですが、この時初めて醤油の偉大さを感じました。
 醤油はしょっぱい味がします。ですがその中にほんの少しの甘み、酸味、苦み、うまみと、5つの味がすべてがバランス良くが含まれているので味わいが深く、ほとんどの料理に合います。信じられないと思いますが、バニラアイスにほんの少〜しだけ醤油をかけてもおいしいんですよ。
 小魚や貝類、昆布などを濃いめの醤油と砂糖で甘辛く煮詰めたものを佃煮と言います。塩味も甘みも強いので保存性が高く、冷蔵庫のない時代の保存食として重宝されました。味が濃く、素材のうまみと甘辛さが重なり合っておいしいので、今でもご飯との相性はとても良いですし、ちょっとずつお箸でつまみながら日本酒を飲むのもまたおいしいのです。
 刺身にももちろん醤油。魚が持っている生臭さを醤油が優しくカバーし、なおかつ魚の甘みやうまみを引き出してくれるので、お酒にももちろん合います? 余った刺身に醤油をたっぷりと絡めて冷蔵庫で一晩置き、翌日、暖かいご飯の上にのせて食べると、醤油が染みこんだ刺身にごはんの熱でほんの少し刺身に火が通り、それがまたとってもおいしい! 刺身だけでも色々楽しめるんです。
 さらには日本のサラリーマンのおじさん達(と私)が大好きな焼き鳥にも醤油! 日本のおじさん達(と私)は仕事が終わると外でお酒を飲む事が大好き! そのお酒に合うのが焼き鳥です。鶏肉や豚肉、野菜を串に刺し、甘辛く味付けした醤油のたれに絡めて炭火で焼いただけなのですが、醤油の焦げた香りと味がたまらなくおいしい! ビールが止まりませんよ!
 日本食のほとんどに使われている醤油。慣れない人には全部同じ味に感じるかもしれませんが、寿司や刺身にはほんの少しだけ使い、煮物や佃煮にはたっぷり使い、サラダのドレッシングやアイスなど、色んなアレンジにも対応でき、さらには焦がしてもおいしいという、楽しみ方がとても豊富な万能調味料なのです。

 




牛肉の佃煮

【材料/作りやすい分量】
牛肉の薄切り…200g
生姜…1片
A.白ワイン…大さじ1(15g)
 砂糖…大さじ1(9g)
B.醤油…大さじ2(36g)
 ハチミツ…大さじ1(21g)
牛脂…適量

【作り方】
1.牛肉は一口大に切り、Aを揉み込んでおく。
生姜は千切りに切る。
2.鍋を中火で熱して牛脂を入れ、
油が出たら1の牛肉を入れて炒め、
肉の色が変わったらしょうがとBを入れ、
水分がなくなるまで煮詰めたら

※ごはんがあればごはんにのせて。
なければサラダに入れたり、パンにのせたりして
お召し上がりください。